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幸せなこと
高橋睦子
西郷文芸学に出会ったのは、初任の頃、僻地手当て買った『著作集』を通してでした。国語は感覚がものをいうと思いこんでいた私にとって、西郷先生の理論や解釈は、ただただ驚きの一語でした。今でも強烈な印象が残っているのが、「手なし娘」の解釈です。
我が子が水に落ち込もうとした時、手なし娘の失った手が子をしっかり抱きしめていた・・・。その奇蹟が、なぜ文芸の世界では許されるのか、それは、読者がそれを願うからだ。民衆は、だれも人の不幸や悲しみを願っていない。
今思い出しても、胸が熱くなります。『著作集』との出会いは強烈でした。
やがて、サークルの仲間に入れてもらい、青森においでになる西郷先生のお話を直接聞く機会が増えました。
(「米寿記念集」より)青森 高橋睦